《みおり》は、今日も混雑していた。
お茶を一口啜り、古めかしいブラウン管テレビを見上げた。
厨房からの音のせいか、元々ボリュームがしぼられているのかよく聞こえないが、生放送のバラエティー番組が流れていた。
「よっ、おつかれ」
いつものようにドサッと向かい側の椅子に腰をおろした鈴木さん。
「阿久津は何にした?」
「チキン南蛮定食です」
「チキナンかあ、うーん……。おばちゃーん! 塩鯖定食ひとつね」
小上がりのテーブルの上を片付けていた店のおばさんが、はいよと返事をした。
「しっかし色の悪いテレビだな。今どきブラウン管ってここぐらいだろっ」
笑い声をあげた鈴木さんが、湯呑みに手を伸ばした。



