あきらめて見送ることにする。
「そんな顔しないの。もうすぐ夜も朝も一緒にいられるようになるんだから」
彼女がそう言ったのは、この春から僕等が一緒に暮らそうと思ってるから。
そうなった理由は………それはまた追々語ることにしよう。
「好きよ」
さっきよりオレンジ色の濃くなった夕日を浴びるサクラさんが、ちょっとだけ背伸びをして僕の頬に口づけた。
そして顔を寄せたまま「やっぱりしとこっかな」って呟いて、ほんの少し唇が触れ合うだけのキスをした。
「俺だって――」
――― ”大好きだよ”
言いかけた言葉は、ドアの音と彼女の笑顔に遮られて………僕は、一人残されたワンルームの部屋をゆっくりと振り返った。
「どっちが小悪魔だよ」
ちょっと愚痴をこぼしてみる。それから――
「”男の子”か……」
何気ない彼女の言葉を思い出し、小さく溜め息をついた。



