あんなの単なる噂話、ほんの些細な雑談にすぎない。
くだらない、とるに足らないことだ。
僕は、胸の中に広がりつつある物を払拭した。モヤモヤとした可笑しな感情の塊を。
心の中で笑い飛ばし、握りつぶして ──
……いや、どうだろう。
本当に払拭しきれる?
笑い飛ばせられる?
気にすることなんてないだろって頭の中で自問してみても、別の自分が顔を出す。
そうかな? 本当に気にしなくて大丈夫なことなのか? って。
ちゃんと知った方がいいんじゃないかって、例えば彼女に聞いてみるとか──
……サクラさんに、直接?
「阿久津」
いつの間にか隣に立っていた鈴木さんに、不意に声をかけられた。
「あ、すみませんっ」
開きかけだった資料を広げ慌てて目を落とす。
すると鈴木さんが、少しだけ声を潜めて言った。
「今日の昼飯付き合えよ」



