「お店に通うだけじゃなくて、外でも会ってるみたい。その子、こぼしてた『キャバクラの女なんて最悪』だって」
昨日、星野が帰り際に呟くように言った言葉を思いだしていた。
『阿久津君、わたし本当はね』
言いかけたその時、星野が乗る電車がホームに入ってきて、なに? って聞き返したんだけど、彼女は笑いながら首を横に振ったんだ。
”本当は” その後になんて続けようとしたんだろう。
たったそれだけのことが気になるのは、星野が見せた表情があの時と同じに見えたからかもしれない。
三年前のあの日。
卒業式の前日に、吉川と別れて来たと唐突に告げられたあの時の……。三年も付き合って、本当に仲が良かった二人が別れた理由を告白された時の……。
あの時の、両目にいっぱい涙をためてるくせに無理矢理笑ったあの顔と重なって見えて。
卒業式を区切りに教室に置いてきた淡い感情と共に、僕の胸の奥をくすぶらせていたんだ。



