あふれるほどの愛を君に


「朝一って随分急ですね」


鈴木さんが訊き返した。


「さっき生産管理の大澤係長から電話があって、札幌店でトラブったらしいんだ。開発の説明が必要みたいなんだが、向かえる人員が今いないからって」


ざっくりとだが内容を聞けば、さほど面倒な案件でもなさそうだった。

現所属以外で開発出身の人間は少ない。


「明日は土曜なのに悪いな。頼まれてくれるか?」

「わかりました」


それから僕はチケットの手配をしてくれた総務の人からのメールを確認し、大澤係長に連絡をとるため受話器をとった。


「阿久津、お前飲み会はどうする?」


鈴木さんの声に振り返る。


「あー……まだ準備にかかりそうですし、明日早いんで」

「そっか……。じゃあ俺から幹事に伝えとくわ。んじゃ、お疲れ! 明日、気をつけてな」

「お疲れ様です」


課長と鈴木さんの背中を見送りスマホを取り出す。

でも、サクラさんへかけたけど飲み会に参加中の彼女にはつながらなくて、仕方なくチャットアプリにメッセージだけを残した。