あふれるほどの愛を君に



それから数日が過ぎ、僕らのチームのコンセプトもおおよそ固まった。

研究結果の乏しい原料を使うには時間不足で、結局、昨年僕と鈴木さんが調査をした海洋深層水を原料とした基礎化粧品を企画することに決定をした。

そしてその週末、黒木さんの歓迎会と今回の企画の決起会を兼ねた飲み会が開かれることになっていた。


開始時間は19時。

夕刻近くに外勤に出た鈴木さんと僕が課に戻ったのは18時過ぎで。

後処理をして僕らもうちの課御用達の居酒屋へ向かおうとエレベーターに乗り込もうとした時、


「阿久津、やっと戻ってきたか!」


僕を見つけた課長が小走りでやって来た。

てっきり、他の人達と一緒に先に店へ向かったと思っていた課長の姿に首を傾げる。


「どうかしました?」


尋ねると課長は、お疲れ!と僕ら二人に声をかけてから僅かに顔を歪ませて言った。


「急で申し訳ないんだが、明日の朝一で札幌へ飛んで欲しいんだ」