僕は、サクラさんの書く文字が好きだ。

丸過ぎず、でも角張ってるわけでもない。
優しいけど凛とした、しっかりしていながら、でもちょっぴり無器用な……。

そんな彼女らしくて好きなんだ。



” 定時あがりでゴハン行こ?
 陽はなに食べたいかな~(^o^) ”

” 桜さんが作ったオムハヤシが食べたいな”


仕事の資料に並んで書かれた、名前入りの二つのメッセージ。

くれぐれも何処かに置き忘れたりしないように、気をつけないとね。


ふと顔を上げると、廊下の窓から中庭の桜が見えた。

薄く色づいた蕾は、数日中に咲くだろう。

休日にサクラさんと何処かの公園へ出かけて、お花見デートなんてのもいいかな。

よし。
今夜、彼女お手製のオムハヤシを食べながら誘ってみよう。

ほくそ笑んで僕は、ミーティングルームのドアを押し開けた。