あふれるほどの愛を君に


本当は、サプライズな演出くらい用意できたらいいのに。でも今は、タイミングもはかれない僕で。

だから、明日仕事が終わったら会えないかって文字にして送ったんだ。

当然、こんな誘い方はおかしいって思った。

付き合っているのに、ましてや彼女の誕生日なのに。よそよそしくって変だって。

本当なら、そんな大切な日の約束をこんな直前になって口に出すなんてあり得ないから。

だから、サクラさんがなんて返してくるかよりもどう思ったかを気にして、すぐには届かない返事のせいで仕事に集中できなかった。

やっぱりガッカリさせた?
悲しくさせた?


………ごめん。

自然とその一言が胸の中に浮かび上がる。

ごめん……大切な日なのにね。

その言葉とやるせない気持ちが交差し、思い出し浮かびあがった画(え)も混ざって入り乱れる。

星野の涙、去って行くサクラさんの背中、後部座席の横顔……。


ごめん………こんな俺で。

声に発して届けられない想いに情けなくなってた一時間前、やっと届いたLINEの返事によって僕の感情はまた変化した。

この耳には届いてこないその言葉を、彼女もまた繰り返していた。


『ごめんね
明日はチームの 中打ち上げがあるから 会えないの

 本当に ごめんなさい 』