あんなことがあったけど、僕が彼女を好きになるのにそれほど時間はかからなかった。
しっかりしてるとこも、その逆なとこも。
優しいところも、時々わがままになるところも。
あこがれの先輩は、一人の可愛い女性になって………やがて特別な存在に変わった。
こっそりと調べたサクラさんの誕生日。
その当日ではなく、少しでも早く祝いたくて前日の夜に彼女に会いに行った。
日付が変わるその瞬間に隣で「おめでとう」って言いたくて、誰よりも早く会いたくて、笑顔にしたくて、その顔が見たくて。
プレゼントだって色々悩んで考えたけど、重くならないよう後輩の自分が渡しても負担にならないような、さりげなくて自然に見える………そんな物を選んだ。
でも僕は、………その日、失恋をした。
サクラさんには恋人がいた。しかも婚約中だった。
彼女の部屋にあった婚約者からのプレゼントは高価なアクセサリーで、見つけてしまったことを後悔した。
好きになったことも、知らずに浮かれていたことも。
だから、諦めるために迷惑をかけないように、距離を置いたんだ。
そんなある日、偶然見かけてしまったその男性(ひと)の後ろ姿と、その背中を見つめるサクラさんの横顔。
―――あの時の、気持ち……?
僕がどんな風に感じて、何を思ったか………。
目に映したものじゃなく、あの瞬間の僕自信の心に映しだしたのは………――。



