三年前の入社試験の時に、初めてサクラさんに逢って。
最終の面接を受ける直前、緊張で押し潰されそうになってた僕を励ましてくれたのが彼女だった。
控え室の椅子に座り “口から心臓が飛び出そう” まさにそんな状態だった時、ついと視界の中に色白の細い手が飛び込んできたんだ。
顔を上げると彼女は、持っていたお茶を差し出して、
「大丈夫」
そう言って微笑んでくれた。
華奢な格好をした綺麗な手に似つかわない、たった一言だけど力強い言葉と眼差し。
とても印象的で、嬉しかった。
“頑張って” ではなく “大丈夫”。
一時の気休めではなく、ちゃんと背中を押してもらえたように感じたあの時。
まさか彼女がその後、特別な人になるなんて思いもしなかったけど。
まさか、こんな感情を抱えることだって想像もできなかったんだ。



