「それにしても、なんでそんなこと聞くのよ?」


逆に質問されてしまい、言葉につまった。

でも別に隠す理由もないし、それほど深い意味もなかったから正直に答えることにした。


「その人のことを一度だけ見かけたことがあるんです、それがある人と似てるように思えて……。距離も離れていたし背中しか見てないくせに、共通点があるのかもわからないくらい知らない相手なのに……どうしてそんなこと気になるのか自分でも不思議なんですけどね……」


無意識の内に自嘲的な笑みを浮かべていた。そんな僕を桃子さんが見つめる。


「ハルオ」

「はい」

「自信がないの?」


真っ直ぐに視線を外さないままの桃子さん。


「その“ある人”が誰なのか知らないけど、似てたのは背格好や雰囲気じゃないんじゃない?」

「え」

「その時のアンタの気持ちはどうだった?」


僕の、気持ち……。

ただ黙ったまま恐らくキョトンとしている僕に、桃子さんは続けた。


「似てるって思ったのは、本当に目に映ってるものだった? その時、ハルオ自身がどんな風に感じて何を思ったかってことよ」