あふれるほどの愛を君に


それからマンションに着くまでに交わした会話を僕は、よく覚えていない。

同じことの繰り返しだったような気もするし、正直、ちゃんと聞いていなかったようにも思う。ただ僕は “ふり” をしていただけだったから。

聞いてるふり、わかってるふり、平気なふり……。

平静でいられない心の内側を悟られないように、作り笑顔まで張りつけて。可笑しくもないのにヘラヘラ笑って、本当にバカみたいだ。


サクラさんを送った後で一人になり見上げた空は、やけに暗く遠く、そして冷たかった。

もう疑うことは止めようって誓ったのに、脆いっていうか情けないっていうか……。

こんなに簡単に揺らぐようになったのは、いつからだろう。


一方的に追いかけてた時は、もっと突っ走れたのに。好きだという感情だけでなんでもやってやろうって思った。

ただ夢中で、今できることをやるしかないんだって。その一瞬に力を注いだ。

でも、付き合うようになった今では、こんな臆病になってる。

何を恐れ、どこまで不安で、どれだけ度量がないのか。

……まったく、自分で自分が嫌になるよ。