するわけがない。
なんて、よく知ってる人のことを話すみたいだね。
そんなによく知らないでしょ? なんて否定するつもりもないけど。
「ハル達のチームにしたら腹も立つと思う。終盤になってあんなことになっちゃって………でも誤解を招いたかもしれないけど、彼はそんなことする人じゃない。そのことをわかってほしくて、少なくともハルには」
わざわざLINEでも電話でもメールでもなく………なんで?
別におかしく感じることもないのかな。
こんな感情を抱えている僕のほうがよっほどおかしいのか。
でも、面白くないよ。
最初に顔を合わせた時の疲れた表情より、真剣な眼差しで訴えるサクラさんの口から語られるのが、黒木さんの名前であることも。
黒木さんのことを “彼” なんて言うことも。必死にかばうとこも。
ちっとも面白くなんて、ないよ。
サクラさん、僕がこんな気持ちになってることなんて、全然気づいてないよね。僕が今、何を思い出しているのかも………。
それは、サクラさんの部屋へと消えた黒木さんの姿であることを。
あの時僕が、二人のことを見ていたこともサクラさんは、気づいていなかったのだから。



