あふれるほどの愛を君に


申し訳なく思う気持ちが募りそうになった時、僕は思わずその場に足を止めた。


「でもね、みんな勘違いしてない?」

「……勘違い?」


それは、サクラさんがこんなことを口にしたから。


「黒木さんは、そんな人じゃないのに」


真っ先に気にかかったのは、言葉そのものよりも語調。

そして次に、そこに含まれた意味よりも街灯に照らされた彼女のあまりの真剣な表情に、何かが胸に突き刺さったような気がした。


「実來ちゃんのことはわからない。でも黒木さんは、彼は不正なんてするわけがないの」


強い違和感があった。この嫌な感覚はなんだろう。

なぜ、そんなに力をこめるんだろう。まるで黒木さんを援護してるみたい。


「彼は誰よりも頑張ってて、今回のこのコンペに力を入れてて。異動してきたばかりなのに指揮をとって皆をまとめてくれて、指示もいつも的確だった」


そっか……。
たった今、気がついた。

こんな時間まで電話でもメールでもなく、外に立ったまま僕を待っていたのは、話したかったのはこのことだったのか。