その時、ミーティングルームの内線が鳴った。
「……はい、はい。わかりました。
鈴木さん、T大学の筒井教授という方から外線1番です」
電話にでた鈴木さんの話は短かった。
受話器を置いて振り返った鈴木さんが僕の名を呼ぶ。
「阿久津、外勤に出るぞ!」
「え。あ、はいっ」
***
T大へ向かう電車の中、鈴木さんはほとんど無言だった。
でもその表情は、重い何かを抱え噛みしめてるようにも見え、僕も敢えて必要以上に話しかけなかった。
大変なことが起きてる最中、しかも時間にも余裕がないのに、なんのためにT大へ向かっているのかはわからなかったが。
それより今はショックの方が大きかった。
企画テーマがバッティング……いや、盗まれた事実に心乱されていた。



