怒号が飛び交う。
大島さんに詰め寄ろうとした井上さんの体を黒木さんの長い腕が制止し、それに腹を立てた井上さんが黒木さんに掴みかかった、その時 ──
「おい! 一体なんの騒ぎだ!?」
廊下奥の階段を降りてきた課長が、小走りでやって来た。
「たいしたことではありませんよ」
落ち着いて答えたのは黒木さん。同時に、胸もとの井上さんの手をふりほどいた。
不穏な空気が流れるなか、鈴木さんが前へ進みでて井上さんの腕を掴む。
「課長、本当にたいしたことではないんです。お騒がせしてすみません。
井上、行くぞ」
「で、でもっ」
「いいから! 皆も仕事に戻ってくれ」
そう言って、黒木さん達へ背を向けた。



