苺の言葉を聞いていないのかどうなのか、龍二は何食わぬ顔で席についた。



◇◆◇◆



 土曜日になった。

 今日は、苺が奈々子と出かける日だ。



「準備はいい?」



 朝六時、奈々子にたたき起こされた苺は何が何やらわからないまま、頷く。


 着替えるよう指示をされ、ピンク色のワンピースに着替えると、朝食を食べることができないまま、外に連れ出された。


 充電が完了しているスマホを見やると、時刻は六時五十分。



「あ、あの、奈々子さん…?」


 赤いマーチの助手席に座ったところで、苺はようやく口を開いた。


「ん、何?」


「こんな朝早くから、朝食もなしにどこへ…『ぐぅぅ〰』



 苺の腹が空腹音を奏でる。