月下の幻影



 月海はハッとして視線を外すと頭を下げた。


「し、失礼いたしました」
「おいで、月海。侍従たちに紹介しよう」


 顔を上げると、渡り廊下の手前で和成が笑いながら手招いていた。

 初めて和成に名前を呼ばれ、心が弾んだ。


「はい!」


 月海はうきうきした気分のまま元気に返事をすると、和成に駆け寄った。