小夜子のいない毎日は、色のない世界を生きることの繰り返しだった。

海の青さも、夜空に白く浮かぶ満月も、空を真っ赤に染めるも太陽も。
見るものすべてが、キャンパスに散る枯葉のような色をしていた。

僕は毎朝、ひとりベッドの中で目を覚まし、テキストとノートをつめた鞄を手に登校する。
眠いだけの講義に耐えて、昼休みには学食で腹を満たし、講義が終われば真っ直ぐに帰宅する。

そうして、夜になればまたひとりベッドに入る。

誰のぬくもりも感じることのできない日々を、ただ永遠と、流れ作業のように繰り返す。


突然羽を引きちぎられ、狭い籠に閉じ込められてしまったような、あまりに大きな現実の変化を、僕はどこか他人事のように、冷静に感心していた。

彼女と過ごしていた頃、あれほど世界のすべてが輝いていたのに、今ではどれも偽物に見え、僕を興ざめさせるのだ。

彼女がその場にいなければ、たとえどんなに美しい景色がそこにあっても、その魅力をなくしてしまう。
見るものも、聞こえてくるものも、まるで違うものになってしまう。



たったひとり、彼女の存在で、こんなにも大きく世界が傾いてしまうのだと、感心している僕がいたのだ。