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夏は終わった。


いつの間にか、蝉の声は聞こえなくてなっていた。
あれほどうるさく鳴いていたのに、街路樹の根本に転がる死骸を見つけるまで、僕はそのことに気が付かなかった。

人が穏やかだというその空は、入道雲のない空だった。
僕らを情熱的に焼きつくした太陽が、青空から姿を消していた。
あるのは当たり障りのない光を放っているそれだけ。

風はときどき、ひやりとする冷たさでこころを吹き抜ける。
カーディガンを身に付け、足早に去っていく人たち。


夏は終わった。

でたらめに汗を流し、でたらめに騒いで、でたらめに浮かれていた夏は終わった。
すました顔で通りすぎる人々を見て僕は思った。


もう秋が来ているのだと。