その言葉で、僕の中の何かが完全に崩壊した。
あと少しで完成するはずだったものが、音をたてて崩れていった。
築き上げるのには大変な時間がかかったのに、壊れていくのはあっという間だった。
何もなくなったこころには激しい嵐が吹き荒れる。
こころの中は荒れ狂っているのに、表面は痺れたまま、固まっていくようだった。
さきほどまで小夜子のぬくもりで満たされていたそれは、崩壊と同時に石のように冷たく、固いものへと成り下がってしまっていた。
ただ確かに残っているのは、小夜子への強い愛だった。
今にも消えそうなのに、強く、揺るぎない小さな炎、それだけ。
僕は気づけば小夜子の腕を振り払っていた。
小夜子から無理矢理身体を離した。
小夜子は突然のことに、ただ驚いていた。
呆然と、僕を見つめる。
「…どうしたの…ヒロト…」
僕は決まり悪く視線を落とした。
本当は、最後の最後まで理性を保とうと思っていた。
けれど、そんなことが出来るほど、僕は器用な大人にはなれなかったのだ。
「…わからない。僕は小夜子が言っていることが、まったくわからない」
僕は吐き捨てるように言った。
