小夜子と離れていたのは、長い夏でその五日間だけだと言っても過言ではない。
もちろん互いの予定で会わない日は何日もあったけれど、まとまって長い期間会わなかったのは五日だけだった。
僕は不思議だった。
どれほど毎日のように会っていても、僕は小夜子に飽きることがなかったのだ。
それはむしろ底なし沼のように、ますます深みへと落ちていく感覚のほうが強かった。
毎日どこかへ出かけてなにかのイベントを楽しんだり、特別遠くへ旅行したわけでもない。
ただ寄り添って、一日中部屋で映画を見ていた日もあったし、ときには同じ部屋にいるにも関わらず、互いに好きなことをしている日さえあった。
それでもたまに、どちらともなくキスをして、どちらともなく抱きしめる。
言葉を交わさなくても、互いの身体に触れることで会話をしていたのだ。
僕にはわからなかった。
このまま終わりのない素晴らしい日々は、いつまで続くのだろうかと。
本当に底のない、沼へとただ二人で落ちていくだけなのかもしれないと、本気で思っていた。
けれど―――
やはり永遠なんてこの世にはないのだと、僕は思い知ることになる。
どんなものにも必ず変化は訪れるのだ。
それが良いものであるか、悪いものであるか。
決めるのは自分だ。
底のない沼を落ちきると、底が現れる。
僕らの永遠は、夏の終わりとともに消えていくことになった。