そうして、長い長い夏がようやくやってきたのである。
僕と小夜子の、二人きりの夏が。
世界に二人きりになった僕らは、ものすごい速さで長い夏を駆け抜けた。
それは手の平を重ねるだけじゃ物足りなくて、互いの身体を押し付け、もつれるように駈けて行った。
僕らは毎日のように会い、キスをして、セックスをしていたのだ。
ある日は汗ばむ真夏の世界に出かけて行って、目的もなくだらだらと街を歩いた。
洒落たショップが並ぶ通りや、ファッションビル、若者が集まる飲み屋街。
人ごみの中に埋もれ、指を絡ませ、ただ歩き、くだらない話をしては笑った。
「見て、あのひとたち」
コーヒーショップでテイクアウトした、アイスティーのストローを口にくわえながら彼女は言った。
サマーバケーションで盛況する、ファッションビルの外壁にもたれながら。
僕らは午後の暑さに耐えかねて日陰で涼をとっていたのだ。
中に入ればもっと涼しいけれど、人の密集した狭い建物に入る気分にはなれなかった。
彼女は入り口へと吸い込まれていく大勢の人を眺めて言った。
