カーテンを開けると、どんよりとした曇り空が窓一面に張り付いていた。


もう時計の針は午後一時をさしているのに、外界はまだ夜明けのように薄暗かった。

はるか山の向こうには、分厚い雨雲がどっしりと構えている。
あの雨雲が、夕暮れが近づくにつれ迫ってくることになるだろう。
僕はまだ重い瞼をこじ開けて、テレビの電源を入れた。

今日は夕方から真優と約束がある。
このあたりではすっかり恒例行事になっている、浴衣祭りに出かけるのだ。
僕に浴衣を見せるのは初めてだと言った真優の笑みを思い出す。

昨晩の真優は、なんだか様子がおかしかった。


僕が女性客と話していたことに、やたら突っかかってきたのだ。

しかし女性客と会話をするなんてことは珍しいことではなく、今までも普通に見られる光景だったのだ。

真優の意図することが、まるでわからなかった。