「あたし見ちゃったんだから」
「え?」
「さっき、お客さんと仲良さそげに話してたじゃん。若い女性のお客さん」
ああ。
おすすめの本を聞かれたのだ。
今月のおすすめとピックアップされた文庫本が並ぶ棚の前で、二十代の女性に声をかけられた。
僕は本という本を片っ端から読んでいるので、そういう知識は豊富なのだ。
数冊紹介すると、今度は話題作のミステリー小説の話になった。
賛否両論ある作品だった。
彼女もそれは読んでいて、僕と同じような意見を持っていたから盛り上がったのだ。
その女性は結局、僕のすすめた本を二冊買っていった。真優はその様子を見ていたのだ。
