猫 の 帰 る 城







ひととおり買い物につきあって、僕らはカフェに入った。


さすがの小夜子も、いい加減疲れたのだろう。


僕は絶好のチャンスとばかりに話を切り出すことにした。
彼女が出来たのことを小夜子に報告するのだ。

小夜子は僕に恋愛感情なんて抱いていないし、別に逆上したりはしないだろうが、彼女がどんな反応を見せるかは少しだけ興味があったのだ。

が、小夜子は飲んでいたアイスティーから目をあげて、


「いよいよ秘密の関係って感じだね」

なんて言って笑うのだから、なんだか拍子抜けしてしまった。

僕は楽しそうな小夜子にちょっとだけ呆れながら、カフェラテのカップに口をつけた。
昼時のカフェは、カップルや女性客でわりと混雑していた。
僕たちもはたから見ればカップルなのだろう。


「なんだよそれ。楽しんでるだろ」

「あら失礼ね、嬉しいのよ。ヒロトの春に乾杯」

「よく言うよ」


真っ赤な唇をつり上げて笑うその顔は、意地悪な魔女のようだった。
細く長い指が、ストローでグラスをかき混ぜる。