猫 の 帰 る 城





付き合うことになってから、僕は一応、小夜子に報告してみることにした。


ある晴れた休日のことだ。

その日は珍しく、小夜子は買い物に付き合ってほしいと言った。
洒落たショップが建ち並ぶ通りをふたりで歩いた。

小夜子は平然と僕の手を握る。
ショーウィンドーに映った僕らの姿は、まるで幸せな恋人同士みたいで笑ってしまった。

小夜子のショッピングは容赦なかった。
ショップというショップをはしごし、何着も試着をしたり店員と話し込んだり。
僕にとっては暇で暇で仕方なく、おまけに足の疲労感だけが無駄にすごい。


「よくそんなかかとの高い靴で歩いて疲れないよな」


と、十件目を過ぎたくらいのショップで嫌味を込めていってやったのだが、小夜子はどこ吹く風だ。
涼しい顔してにっこり笑う。


「ヒロトとは鍛え方が違うのよ」


そうしてまた試着室にこもるのだ。


それでもまあ、春の新作を身に着け、僕に自慢げに見せつけてくる小夜子の姿を見ていると、なんだかどうでも良くなったってしまったのだけれど。