彼女からの電話は、いつだって突然だ。


鮮やかな夜景を貼り付けた、二十三階の窓ガラス。
こんな夜中にも関わらず、街はまだ煌々と光を揺らしているのがなんだか不思議だ。
自分のように、まだ働き続けている人間はごまんといる。

この夜景はその証明なのだ。


しんと静まり返った部屋でスマートフォンが震えた。

ノートパソコンから顔をあげ、机に置かれたデジタル時計に目をやる。

午前零時二十七分。

僕は書きかけの原稿を保存すると、スマートフォンを手に立ち上がった。
夜景を正面に見据え、画面に表示された文字をみる。




滝本小夜子