「伝説の卒業式」と今でも語り継がれているらしいあの日のことを思い出しながらため息をつくと、止まったままだったページが捲られ、パタリと重たい表紙が思い出の中のあたしを消し去った。

「どないしたん?そんな悲しそうな顔して」
「いいや、別に。ミチル、元気かなぁっと思っただけ」
「嘘つき」
「侑士こそ」
「あの時、もう既に朔也とは話ついとったから。美雨は俺が貰うってな。ミチルちゃんに告白された時にもそのまんま言うたし」
「酷い男」

後ろからあたしを抱き締めるこの腕は、あの頃とちっとも変わってはいない。

優しくて、暖かくて。

守ると言うよりも、閉じ込めるようにあたしを抱き締める。そんな腕。

「美雨」
「ん?」
「我永遠只持續愛你」(永遠に君だけを愛してる)
「我也愛你」

その腕の中に閉じ込められ、身動きが出来ないように罪と言葉で縛り付けられる。
あの頃それを望んでいた筈もないし、それは今でも勿論変わらない。


ただ一つだけ変わったことと言えば、永遠などというバカらしい誓い文句を尤もらしい台詞と声で心の奥にねじ込まれ、それに頼って侑士への想いを繋ぎ止めていること。


ただそれだけ。