ただ、人並みに憧れていただけだった。
彼ら自身にも、彼らを取り巻く世界にも。

 



もう十五年以上も前の物になってしまったアルバムを開くと、どのページにも必ずあの頃の侑士の姿がある。
制服で煙草を吹かしてみたり、テニスラケット片手にヤンキー座りをしてみたり。純真無垢な少年と言うよりも、完全に大人の世界に浸ってしまった少年。そんな感じさえする。


老け顔、と言えば怒るけれど、彼は確かに同年代の中でもかなり大人びた顔立ちをしていて。
よく一緒に連れ立って遊んでいた男子テニス部の仲間は、物憂げに遠くを見つめる彼の横顔を「三十代の男の横顔だ」と表現して笑っていたような気がする。


「懐かしいなぁ。高校ん時の写真?」


文庫本を片手に背中合わせに座っていたはずの侑士の顔が、いつの間にかあたしの左肩に乗っている。

気付かないあたしも如何かと思うのだけれど、完全に気配を消し去って背後を取るのはやめて欲しい。
いつも一緒にいた学生の頃ならまだしも、月に二回、多くて三回会うだけになってしまった今は、もうその驚きに素早く対応出来るほどの順応性は頭の片隅に僅かに残っている程度のものなのだから。

「急に話し掛けんといてよ。びっくりするわ」
「そりゃどうもすいません。懐かしいなぁ。あいつら今どないしとんねやろ」
「さぁ。侑士の方がよく知ってるんちゃうの」

高校生の頃何の因果か知り合いになってしまったあたし達は、今でもあの頃と変わらずに身を寄せ合ってくだらない話に花を咲かせている。
お互いの一番楽しかった時期を一緒に過ごしてきたからこそ、そこにある思い出も同じ。だから余計にこの空間が心地良く感じるのかもしれない。