不誠実な恋

「ねぇ、年いくつ？」
「俺？３５やけど」
「見えないね。ある意味卑怯だよ、童顔って」
「童顔！？俺が？」
「笑った顔だけね。それズルイと思う」
「あー、それはよぉ言われる。仕事場でもモテモテや」
「ふぅん。聞いてないけどね、そんなこと」
「何？ヤキモチ？」

ヤキモチと言うのだろうか。出会って一時間程度会話をしただけで、お互いに何も知らないというのに。

これがまさにそうだと言うのならば、あたしの想いは完全に侑士の掌中にある。不本意だけれど。

「昼間はなっちゃんのために時間空けたるやん。一緒にメシでも食おうや」
「空けてくれなくても良いから」
「ホンマ素直やないなぁ。まぁ、そこも若さでカバーやな」
「煩いよ。どうせ空けるなら日曜にして。あたしまだ高校生なんだから」
「んー。そりゃ無理なお願いやな。日曜はパパにならなあかんから」
「子供…いるんだ」

聞くたびに幻滅していくはずなのに、それに反して想いばかりが大きくなって。
完全に遊ばれている。そうわかっていても、単行本の表紙の裏に書かれた青い数字を携帯番号として押さないという保障は何処にも無い。