不誠実な恋

「平日と土曜の夜、それと日曜終日。それ以外やったらいつ掛けてきても大丈夫やで」
「要するに、平日と土曜の昼間しかかけちゃダメってことじゃん。何でそんなに限定されてるの?」
「ん?俺、既婚者。都合の悪い時は出んと掛け直すから悪しからず」
「…最低」
「適当に息抜きせなやってられんねんって」
「ただの言い訳じゃん。ご心配なく。絶対掛けないから」
「そんなこと言うても掛けてくるよ、なっちゃんは。こんな風に一人で本読んでる時に、絶対俺のこと思い出すから。んで、侑士に会いたいなぁって思うから」
「思わないし。勝手に決めないでよ」

惹きつけて突き放す。そして、また惹きつける。
侑士の理論で行くならば、これはSM恋愛だろうか。そんなこと、ちっとも望んではいないけれど。


「なっちゃんさえのめり込まへんかったら損はせぇへん思うけど」


考えを読まれてしまえば、抵抗する術もなくなるというもので。
差し出された携帯に大人しく番号を入力し、力任せに押し返す。悔しいと言うよりは、してやられた感の方が強いかもしれない。

左手の薬指に嵌められたリングを見過ごしたのもあたしだし、その感性とやらに惹かれつつあるのもあたしなのだから。