ラブソングを君に

「あ、ありがと!音弥!!」

私は音也から楽譜を受け取ると、食い入るように楽譜を見つめた。



そして大きく息を吸い込んだ。

「…~~~♪」



今まで、ただの英語だったものが脳裏で形を描いていく。

これは恋の歌。

掴み損ねた恋心を実感した、切ない女の子の歌なんだ。



気付けばマリンバの優しい音色がセッションしていた。

音弥は真剣に、でもどこか楽しそうにバチ(マレットというらしい)を動かす。

ああ、楽しい。歌うことはこんなにも楽しかっただろうか。

昼休みの終了を告げるチャイムが鳴って、私と音弥は慌てて音楽室をあとにした。


「音弥っありがとう!」

別れ際にそう言い残し、音弥の返事を聞かぬまま自分のクラスのほうへと走った。