携帯の音がどこからかする、
…あぁ、あたしは夢を見てたんだ。
体中、汗びっしょりのまま携帯を手に取った。

「あ、梨華?…あたしだけど、今日空いてる?」

明美の声。
あたしは、すこしホッとして返事をした。
明美との待ち合わせまであと少し。
あたしは、顔を洗って、クローゼットを開きまた夢を思い出した。
けど、今は聞こえない。
さっきまで覚えてたのに。
あの声も言葉も全部思い出せない。
けど、誰かいたの。すっごく大切な人。


一生懸命思い出そうと悩むバスの中。
明美はただひたすらあたしを待っていた。
あの時の明美の言葉は、いまも思い出すと苦しくなる。
あのね。
田中のせいじゃないよ。
きっと誰のせいでもないの。
だから、責任とか感じないでいいからね。