―――と。

大学の門のあたりから黄色い悲鳴にも似た歓声が聞こえた。それは紛れもなく、女子のもので。

でも、興味はないから目は向けない。



「ねぇ……!花音!あれ、神楽くんじゃない!?」

その一言を聞いて、すぐさま顔を上げた。


「……う、そ」

私の独り言はまたもや黄色い歓声にかき消された。
あっち側に目を向けて、その男に視線を注げばどこからどう見ても千影だった。この私が彼を見間違えるはずがない。


「(企んでたのはこれか、)」


さて、どうしよう。


隣でキャッキャ騒いでる愛海を見ながら、私はうっすら冷や汗をかいていた。


とりあえず、騒がれている張本人にクレームのメールを送りつける。
『帰ったら説明してもらうから。』

すると、人ごみの中にいる彼と目があった。当然、私はそれを睨みつける。―――でも、彼は私しかわからないような、ふっと笑みを垂らす。


―――それにまた、胸がきゅんと疼いたのは内緒だ。