冷たいアナタの愛し方

ジェラールがオリビアの髪を引っ張ってからかっていたのを目撃したルーサーは、珍しく女の子に突っかかっているジェラールがオリビアを気に入ったことににんまり。

家柄からして王族と婚姻関係を結べるほどの名家の出ではないだろうが、ジェラールが王になれば嫁などいくらでも娶れる。

正妃はきっとジェラールの意志では選べないだろうが…オリビアが傍に居るときっと安らげることだろう。


「あ、優しい人さん!垂れ目さんが私のことがりがりとか女らしくないとかうるさいの。垂れ目さんは女の子はみんなふわふわしてて可愛くて優しいって思ってるみたい」


「まあ大抵の女の子はそんな感じだと思うけどオリビアはちょっと違うよね。…ここは元軍人が多いって言ってたけど、もしここが攻め込まれたらオリビアも剣を取って戦うの?」


問うと、オリビアはサンドウィッチを頬張りながらさも当然だと言わんばかり口元をソースでべたべたにしながら頷いた。 


「そうだよ、こう見えても剣の筋は良いってお兄様たちに言われたんだから。もうちょっと大きくなったら本格的に学ぶの。私料理は全然できないけど剣は得意なんだから」


「さらに女らしくなくなるな。嫁の貰い手がますます無くなるぞ」


「いいもん別に。でもこんな私でもいいっていう人が居たら結婚してもいいかな」


「そんな奇特な男が居るか?夢見るのも大概にしとけよ」


むうっと頬を膨らませて怒りを主張したオリビアと鼻で笑っているジェラールの間に慌てて割って入ったルーサーは、少し意地悪をしてやろうと思ってオリビアのまだらな金茶の頭を撫でて笑いかけた。


「じゃあ僕のお嫁さんになる?いいとこのお坊ちゃんだし垂れ目くんよりは優しいよ」


「えっ」


ぽっと頬を桜色に染めたオリビアの反応にむかっとしたジェラールは荒々しく立ち上がってシルバーに向けて口笛を吹いた。


「ワンコロ、遊んでやるからこっちに来い」


「ワンワン!」


…狼なのに何故か犬のようにワンワンと鳴いて喜ぶシルバーを奪われた気分になったオリビアは、照れ隠しも手伝いつつルーサーのマントを握って上目遣いに表情を窺った。


「さっきの…ほんと?冗談?」


「え?…えーと…君にお婿さんが見つからなくて、僕にお嫁さんが見つからなかったらね」


オリビアの表情が輝く。

後できっとジェラールに痛い目に遭わせると肩を落としながらも、ルーサーはまんざらではない気分になってオリビアに笑顔を向けた。