冷たいアナタの愛し方

午前中は家庭教師による座学があるので、シルバーのご飯の心配やジェラールとルーサーの旅人コンビから面白い話を聞き出したくて落ち着きなくそわそわしてしまったオリビアは、座学の終了と共に部屋を飛び出た。

何しろ昨晩は誕生日で夜遅くまでパーティーをして祝ってもらったので、睡眠不足になりながらも台所に行って笑顔でコックに両手を差し出した。


「今日のお弁当はなあに?」


「今日はハムカツサンドと卵サンドですよ。デザートにはお手製のヨーグルトを。陛下と王妃様が心配するので早めに戻って来てくださいね」


「はーい。おいしそうなランチをありがとう」


オリビアがランチ入りのバスケットを手に天気が良い日はピクニックに出かけるのは日課なので、コックたちはあたたかい目でオリビアを見送ったが――

何時に待ち合わせなど具体的なことを取り決めていなかったので、焦りながら裏門を出ていつもシルバーと遊んでいる森の奥の方へと行くと…すでに先客が到着していた。


「遅い。いつまで待たせるつもりなんだ」


「垂れ目さん…何時から居たの?お勉強してたから遅れちゃった。でも会いに来てくれてありがとう」


実は早朝から居ました、と言い出せなかったジェラールは、薄目でオリビアを睨んで膝の上で眠ってしまったシルバーを指した。


「重たい。どけてくれ」


「シルバー…優しい人のほうが優しそうなのにどうして敢えてそっちを選ぶの?」


「……」


「優しい人は?みんなでお昼食べようよ。シルバー、お肉の塊盗んで来たよ」


オリビアが声をかけるとシルバーはすぐに飛び起きてちぎれんばかりに尻尾を振りまくり、長い間“待て”をさせてようやく肉にありついたシルバーの背中を撫でてやっているオリビアをジェラールが凝視。


「もらわれっ子って言ったな。どこからもらわれた?」


「教えてくれないの。でも私がもらわれた日はお父様とお母様の女の子の赤ちゃんが死んだ日って聞いたけど。孤児院かな、よくわかんない」


普通ならば自身の出自が気になって調べるところだが、のびやかに育ったオリビアは大らかな性格で、どこで生まれて何故今の家にもらわれたのか、気にも留めていない。

ジェラールは昨日ルーサーから囁かれた提案を鵜呑みにしたわけではなかったが、確かに成長すれば美しい娘になりそうなオリビアの長い髪をくんと引っ張った。


いじめっ子といじめられっ子。

2人の関係は、はじまったばかり。