冷たいアナタの愛し方

オリビアと話していると、お嬢様のイメージが崩れてしまう。

お嬢様というのはおしとやかで白魚のような手をしていて、大口を開けて笑ったりしない。

もちろん剣を握るなどもっての外だが、オリビアは剣を握るというし、今も目の前でドレスの裾をはためかせてシルバーを追いかけて走っている。


「…お嬢様ってあんな感じだったか?」


「うーん…オリビアは例外じゃないのかな。でも身なりも良いし、ひとつひとつの所作もよく見てみるとちゃんとしてるよ。本当にいいとこのお嬢様みたいだけど…家柄がつり合うといいね」


「は?どういう意味だよ」


「どうせ政略結婚なら気が合った女の子の方がいいでしょって意味。君は国王になるんだから一夫多妻制でしょ。オリビアは王族じゃないから正妃は無理だろうけど第2王妃くらいには…」


「あんながりがりではすっぱな女興味ない。それにまだガキじゃないか」


「今はね。でもあの子が15歳になった時、君は20歳だ。それで見合うんじゃないの?」


「……やけにけしかけてくるが、お前の方がオリビアを気に入ったんじゃないのか?」


じとっとした目つきで睨まれたルーサーは、慌てて手を振って否定すると、シルバーを抱っこして戻って来たオリビアがとすんと隣に座った。

自分の隣に来ないことでまたいらっとした表情を見せたジェラールに変な汗が止まらなくなったルーサーは、陽が暮れてきた空を見上げてそそくさと立ち上がる。


「そろそろ宿に戻ろうか。オリビア、君もお嬢様なんだからみんなが心配するよ」


「うん、でも…シルバーは家に連れて帰れないの。私が拾った子だからぎりぎりまで傍に居てあげたいの。ねえ、明日もまた来てくれる?」


「え?う、うーん…」


ここで再び自分の名が挙がらないことに瞳を細めたジェラールの険しい表情に気づかないオリビアは、尻尾を振ってジェラールの足元にまとわりついているシルバーを見て目を丸くする。


「この子が誰かに懐くなんて珍しい!垂れ目さん、明日また遊んでね」


「……気が向いたらな」


行く気満々だったが、焦らしておいた。