冷たいアナタの愛し方

ジェラールとはぐれてしまい、もしかしてまだオリビアを捜しているのかもしれないと思うと眠れなくなったルーサーは、ガゼルとエイダが2階に引き上げて行った後、ソファに寝転がって仮眠を取っていた。

オリビアが寝ている客室からは物音ひとつしない。

少し気になってドアをそっと開けてみると、暗闇に2つの金色の光を見つけた。


「シルバー…落ちそうになってるけど大丈夫?」


まん丸になり、ふかふかのお腹に抱き着くようにしてオリビアが眠っている。

オリビアが身じろぎしてベッドから落ちそうになると、すかさず服の襟首をそっとくわえて引き寄せた。

この天狼が傍に居れば危ないことなど起きないだろうと判断したルーサーは、夜更け前にも関わらずガゼルの家を後にして繋いでいた愛馬に話しかけた。


「今からローレンに行く。疲れてるかもしれないけど頑張って」


愛馬を励まして騎乗すると、蛮族の巣から1時間ほど駆けたところにあるローレン目がけて馬を走らせた。

遠くからもはっきりと北の方が真っ赤になっているのがわかり、街を燃やされているのでは…という懸念が頭をもたげて二の足を踏んでいると、後方から馬が駆けてくる蹄の音がした。


「よう、なにひとりで行こうとしてんだよ」


「ガゼル…あれはローレンが燃えているんじゃないのか?まさかそんな命令をお前が…」


「してねえし。してるとすればガレリアの本隊だろ。だけど利用価値があんだから街を燃やすか?あれは…死体を燃やしてるんじゃねえのか?」


――いきなり唐突もなくガレリアと蛮族に攻め込まれて陥落したローレン。

大義名分を振りかざしての進撃だったが…覇王剣を持つものを見つけられなければ、各諸国から非難の声が挙がるのは避けられない。

…覇王剣の使い手なら今蛮族の巣に居る。

天狼にお守りをされながら、父王たちとの再会を待っているのだ。


「ウェルシュはオリビアを捜している。だが彼女が王女であることを知らない。事情があってのことだが、僕はそれを知られたくない。理由は…聞かないでくれ」


「まただんまりかよ。…まあいい、とりあえずお前は第5王子を捜せ。俺は騒ぎを鎮圧する。勝手に暴れてる奴らは俺がとっちめておく」


「助かる」


「俺はウェルシュとは顔を合わせねえ。あいつはいけ好かねえ奴だからよ。用が済んだら巣に戻って来い」


その場限りの同盟を誓い、先を急ぐ。