冷たいアナタの愛し方

シルバーは大きな肉の塊の前で伏せをしていた。

シルバーはオリビアの手からでしか食べ物を与えられても口にしない。

腰に手をあてて仁王立ちしているオリビアをじっと見上げてゴーサインが出るのを待っている。


「よし」


ゴーサインが出ると大きな口を開けてあっという間にぺろりと平らげ、尻尾をぶんぶん振ってオリビアにすり寄りまくり、尻尾パンチが腰に直撃したルーサーは腰を押さえながら半身を折った。


「いたたた。シルバーは相変わらずオリビアにべったりなんだね」


「うん、赤ちゃんみたいでしょ?でも私知ってるの。いつもご飯が足りなくて自分で狩りをしに行ってるんだよ。誰にも教えられてないことのはずなのに偉いねお前は」


立ち上がらなくてもオリビアの身長ほど大きいシルバーは、オリビアを背中に乗せるのが大好きだ。

今も頭を低くして乗ってもらおうとしていたが建物の中で走り回るのには狭く、相変わらず不躾な視線をよこしてくるガゼルを睨みながらエイダに許可を請う。


「あの…シルバーと一緒に寝てもいい?」


「別にいいよ。でも一緒に寝れるほどベッドは大きくないけどね」


「大丈夫。わあ…私、シルバーと一緒に寝るのはじめて。行こ」


シルバーの尻尾を掴んで客室へと行ったオリビアの後を追いかけたルーサーは、伏せ状態のシルバーがベッドに座り、そんなシルバーに抱き着くようにして横になっているオリビアに頬を緩めた。


「お休みオリビア。明日はローレンに行って来るから戻って来るのは遅くなるかもしれないけど、君はここから出ちゃ駄目だからね。…僕との約束、覚えてる?」


「うん。ルーサー…お父様たちを見つけてきてね。お願い…」


色々なことが一気に起きて疲れていたオリビアが眠りに落ちて行くと、ルーサーはガゼルと真向かいになって座り、声を抑えて提案を持ちかけた。


「…寝返りは可能か?」


「ウェルシュからか?俺たちは金で動く。それに見合うものを俺の前に積んでみせろ。そしたら考えてやってもいい」


肩を竦めて見せたルーサーは、ジェラールの頭に王冠を乗せるべく決意を漲らせた。