冷たいアナタの愛し方

「シルバー、ぷるぷるしちゃ駄目だからね。じっとしててよ」


「わふっ」


ルーサーが両耳を手で塞いで水が入らないようにしてやり、オリビアが温かいシャワーを身体にかけてやり、石鹸で身体中を擦りまくった。

オリビアの命令通りぷるぷるせずに伏せをしてじっと耐えているシルバーは、オリビアの一挙手一投足を見逃さない。

幼い頃オリビアに拾われたらしい天狼は、オリビアを娘のように、母のように、時には恋人のように思っているに違いない。


「…で?ルーサーはさっきから私ばっかりちらちら見てるけど…何か言いたいことがあるんでしょ?それとも…秘密を話そうとしてるの?」


「…金色の剣のことだね。君はあれが覇王剣だと知ってたの?」


「リヴィのことでしょ?覇王剣って言うの?あの剣は…私の身体の中にあるの。私はリヴィの鞘であって、使い手であって…でも使っちゃいけないって言われたから…もう…」


「ん、もう見せない方がいいと思う。…オリビア…君はこのことを誰にも話しては駄目だ。わかったね?」


「うん。垂れ目の怖い人にも?」


ジェラールのことを口にしたオリビアに金茶の瞳でじっと見つめられて手元が狂ってしまったルーサーは、シルバーの耳の中に水を入れてしまって盛大なぷるぷるをされた。

なまじ人が何人も乗れそうな巨体なので、ルーサーもオリビアも水浸しになってしまったが…オリビアはシルバーを怒らずに鼻面を両手で掴んでめっと言った。


「ぷるぷるしちゃ駄目って言ったでしょ?着替え…あるかなあ」


「あると思うよ、後で聞いてあげる。…垂れ目で怖い人にもとりあえず覇王剣のことは伏せておいて。僕とオリビアだけの秘密ってことにしておこう」


「うん。ルーサーたちはどこの国の人なの?もう教えてくれてもいいでしょ?」


ルーサーはタオルで金の髪を拭きながら真顔になった。

するとオリビアの背筋が伸び、身体を緊張させているのがわかった。



「オリビア…僕は…ガレリアの者なんだ。僕が第4王子で、垂れ目くんが第5王子。ローレンを攻めたのは、長兄のウェルシュ。…僕と垂れ目くんは反対したんだよ。君を助けに駆けて来たんだ」


「……ガレリア…」


「そしてここは蛮族の巣。君には不利な状況と見るかもしれないけど、それは違う。オリビア、間違えないで。僕たちは味方だよ」



オリビアは放心していた。

ルーサーはオリビアが我に返るまでずっと両手を握っていた。