冷たいアナタの愛し方

泣いているオリビアと目が合った途端ぱっと視線を外したガゼルが外に飛び出して行き、ベッドに腰掛けたルーサーはオリビアの小さな手を握ってなんとか元気を出してもらおうと励ました。


「明日ローレンに行って状況を見て来るから泣き止んで。いいね?」


「……ひっく…うん……」


首を見せてやる、と言われた言葉が耳から離れなかったが、なんとか頷いたオリビアは、何故優しい人がここに居るのか――そしてこちらをじっと見ている女性は誰なのか…尋ねたいことが山のようにあって額を押さえた。


「優しい人さんは……どうして私を助けてくれたの……?」


「…オリビア…君に言ってないことがあるんだ。僕は……」


ガレリアの者だ、と言おうとした時、勢いよくドアが開く音がしてつい言葉を切ったルーサーは、エイダに手渡されたハンカチで顔を覆って涙を見せまいとしていた。

戻って来たガゼルは朗報だと言わんばかりに口元に笑みを上らせて八重歯を見せる。


「王たちの死体は見つかってねえ。つまり…生きてるってことだ」


「ほんとにっ!?お父様たちは…生きてるの?!」


まだ完全に状況を把握できているわけではないが、現段階では王宮から王たちの死体は見つかっていない。

ルーサーにそう話したガゼルは、喜んで顔を輝かせたオリビアに頬がかっかっしてしまいながらもなんとか頷く。


「隠し部屋みてえなものがあるのか?あるとすれば…」


「…わかんない…」


しゅんとなって俯いたオリビアの手をまたぎゅっと握ったルーサーは、優しいと言わしめた微笑を浮かべてオリビアをゆっくり抱きしめた。

…ガゼルがぴりりとしたことにも気付かず。


「今は何も考えずにゆっくりして。ね、オリビア」


そして、ガゼルたちには聞かれないように耳元でこそりと囁いた。


「覇王剣のことは2人には秘密に」


「!……し…知ってたの?」


小さな声で返してきたオリビアの声は震え、身体を離したルーサーはにこと笑って肯定しつつ、話を打ち切る。


「僕たちは席を外すからゆっくり眠ってね。シルバー、番を頼んだよ」


「わん!」


…ガレリアの者だということを話さなければ。

それはとても憂鬱なことで、ルーサーに重たいため息をつかせた。