冷たいアナタの愛し方

綺麗になったオリビアを抱き上げてリビングと思しき部屋を横切り、客室へ行ってベッドに横たえさせた。

血の気が戻って少し表情が和らいだように見えたがまだ目を覚まさず、家に入れてもらえずに外でわんわん鳴いているシルバーが外から爪を立ててがりがり音を立てている。

大人しくさせようとルーサーが外に出た途端するりと中に入り込まれてしまったが、エイダはそれを止めずに一目散にオリビアへと駆け寄ったシルバーを見て目を丸くした。


「こいつは天狼じゃないか。滅んだと思ってたけどまた生きてたんだね」


「天…狼?」


「ああ、光へと導く狼。大神とも呼ばれる神に近い生き物さ。この子には何かしら運があるね」


オリビアの頬をぺろぺろ舐めているシルバーの背中をルーサーが撫でてやっていると、オリビアの金色の長い睫毛が微かに震えた。

そして指先もぴくりと動き、それに気付いたシルバーが尻尾を振りまくると、オリビアの瞳がゆっくり開く。


「…シルバー……」


「わふっ」


まだぼんやりとしていたオリビアは、ゆっくり顔を動かしてエイダとガゼル…そして最後にルーサーで視線を止めた。


「……優しい…人……さん…」


「オリビア…覚えているかい?助けに来たよ。君は森の奥で倒れていたんだ。ここは安全な場所だから安心して」


「……お父様!お母様!!お兄様たち!!!」


突然思考がクリアになったのか、オリビアが悲鳴のように叫んで起き上がった。

森の奥で見つけるまでに一体何が起きたのか――まだらな金と茶の瞳はぶるぶると震えて、元々小さな身体をさらに丸めて頭を抱えた。


「お父様たちが…!蛮族たちに…!」


ガゼルとエイダが密かに視線を交わす。

ウェルシュからローレンを襲えと命令があり、向かってきた者には攻撃を許していたが…王たちだけは必ず捕えろと配下に申し伝えていたはずだ。

蛮族の掟は鉄の掟なので、これを破ると長のガゼル自らが手を下して制裁を加える。

それは死を意味するので、彼らは仲間意識が強く、掟は絶対に破らない。


「ガゼル、配下たちに聞いてきな。もし王たちを殺していたら…あたしやあんたはこの子に申し開きができない」


「……ああ」


だがガゼルは――涙に濡れたオリビアの顔から目を離すことができなくなっていた。