冷たいアナタの愛し方

蛮族の巣の入り口はかなり鬱蒼としていたが――奥へ進むにつれだんだんと開けてきて、ログハウスのような木造の建物が多く連なる村が見えてきた。

そのうちの元も大きくていっぱしの屋敷とも言える建物へと案内されたのだが…蛮族たちの視線が突き刺さってくる。

長のガゼル自らが案内しているので手を出してくることはなかったが――彼らは基本的に仲間以外受け入れない。

大金を積めば雇えるが、その額は大国でない限り無理な金額で、ガレリアの長兄ウェルシュは金に物を言わせて彼らを雇っているのだ。


「隣に使ってねえ部屋がある。そこに転がしておけ」


「お前は…この女の子の名を知っているのか?」


「オリビアだろ、そんなことも知らねえのかよ。死産した赤子の代わりに養女として育てられた女だ。ま、王女の名前まではさすがに知らねえか」


――間違いないらしい。

酒瓶を傾けてラッパ飲みしているガゼルを部屋に残して使っていないという部屋に行くと、意外と綺麗なベッドがひとつあり、そこにオリビアを横たえさせた。

白いネグリジェには点々と返り血がこびりついてあり、よく見れば頬や手にも赤黒いものがついている。

見えている部分は綺麗な布で拭ってやったが…服まではさすがに無理だ。


「ガゼル、女性の方に手伝ってもらってオリビアの服を…その…着替えさせてほしいんだ」


「ああ、ちょっと待ってろ。母ちゃーん!」


ソファにふんぞり返っていたガゼルが2階に繋がっている階段の方に声をかけると、2階からすらりとしたいかにも戦士らしき女が降りてくる。

まだ30代といったところか…身体にフィットした鎧を纏っていた女は、ルーサーをじろじろ見つめた後眉を潜めた。


「ガレリアの者じゃないか。あんたなにこんな奴巣に入れてるんだよ!」


「いでっ!母ちゃん、これには事情があるんだって。ちゃんと話すからよ、その前に隣の部屋で寝てる女を綺麗にしてやってくれ」


「女?甲斐性無しのあんたが女を連れて来たのかい!?ちょっくら見て来ようじゃないのさ」


うきうきした足取りで隣室を見に行った女に呆気に取られていると、ガゼルは小さな舌打ちをして紹介した。


「俺の母ちゃんだ。怒らすんじゃねえぞ、マジ怖いからな」


不安になったルーサーは跡を追って隣室へと向かった。