冷たいアナタの愛し方

戦い方は、兄たちが教えてくれた。

女の子に剣なんて、と母が憂いていたが、父と兄たちは処世術程度だからと言いながら、オリビアの剣の筋が良いと見るや本格的に剣を打ち合うまで教えてくれた。


その処世術が今役に立つなんて――


『オリビア、ちゃんと前を見て。教えてくれたことを最初から最後まで思い出して』


「教えてくれた、こと…」


自らが放つ金色の光に包まれて恍惚状態になっていたオリビアは、魔物でも見るかのような目つきで恐怖に身体を震わせている蛮族たちに視線を遣る。

彼らもまたオリビアが覇王剣の持ち主だと知り、ウェルシュの命で何としてもガレリアに連れて来いと言われていたが――まさか女の子だとは思っていなかったので面喰って動けずにいる。


「筋肉の動き…視線…」


オリビアの身体がゆらりと揺らめき、山のように大きなシルバーを従えて金と銀に光る覇王剣を水平に持った。

構えているのではなくただ水平に持っただけだが、それだけで空気がびりびりと振動して命の危機を感じた蛮族たちは手が震えて剣を落としそうになりながらも身構える。


「た、戦う意志はない!ガレリアに一緒に来てくれれば俺の役目はそれで終わりなんだ。だから一緒に…」


「…父を…母を…兄たちをよくも……」


どこから吹く風なのか――

オリビアの金茶の長い髪はふわふわと宙を舞い、男たちが剣を構える腕をじっと見つめているうちに、流れている血液の音や細胞が駆け巡る音まで聞こえるようになった。


今目の前に居る男は真っ直ぐ突進してきて、剣を振り下ろすふりをして半回転して背中に回り込んでくる――


何故か男の一歩先の行動を予測したオリビアは、男が駆け込んでくると同時に一歩前進して半回転する隙を与えずに真横にリヴィを薙いだ。

男の首は…きょとんとした表情を浮かべたまま吹き飛び、首を失った胴体は首が離れたことに気づきもしないのかよたよたと数歩歩いた後、大地に沈んだ。


『上手よオリビア。私とあなたの存在が知られないように全員殺してしまいましょう』


くすくすと笑う声。

オリビアは殺意に身を委ねたまま、紙のように軽いリヴィの柄にキスをしてその声に従うことにした。