冷たいアナタの愛し方

あの優しい父、母、兄たちが惨殺されたと知ったオリビアは、身体の内側からじわじわ湧き上がってくる何かと激怒に視界がぐらぐら揺れていた。


「お父様たちを…殺したの…!?」


「ここはガレリアの属領となる。そろそろガレリアの本隊が到着するはずだ。力など隠しておくからこんなことになるのさ」


「力…!?力なんか持ってるわけない!ここは中立国なのよ!?」


頭の男はさも愉快そうに肩を揺らして笑い、燃え盛る森の悲鳴をバックグラウンドに歌うように言った。


「覇王剣の持ち主を隠していただろうが。何も聞いてないのか?」


「覇王…剣…!?」


攻めて来たのはガレリア。

そして覇王剣という聞き慣れない言葉と父たちの死のショックに身体がぐらぐら揺れているオリビアは、心配して鼻をきゅんきゅん鳴らしているシルバーの背中の毛を掴んで歯を食いしばった。

父たちが何かを隠していたのならば、それは問題だ。

だがそんなことで話し合いの席も作らずに攻められる筋合いはあったのだろうか?


覇王剣とは一体何のことなのか?



「そうだな、ぬくぬく育ったお嬢様は知らなくてもいい話だったかもな。とりあえずお前は奴隷としてガレリアに連れて行く。生き残った王族はお前だけだからな。どうだ、首と胴が切り離された父親の姿を見せてやろうか?おい誰かへスターの首を持って来い」



ぷちん、と何かが弾けた。

沸き上がる大きな力は、自分を守ってくれる力だ。

何故かそう感じたオリビアは、父と交わした約束を破り、胸に手をあてるとリヴィに呼びかけた。



「リヴィ…私…死ぬわけにはいかないわ…。お父様たちの仇を取らなくちゃ…!」


『目覚めたのね。力を貸してあげるわ。私を扱えるのは、オリビアだけだもの。あなたを守ってあげる』



――何かが応えた。

女の声で。

鈴のような可愛らしい声で。


オリビアの全身から金色の光が噴き出した。

炎よりも強く鮮やかな色に蛮族たちは目を庇い、纏う空気が変貌したオリビアを戦慄を持って見つめる。


「な、なんだ!?」


「許さない…!」


殺してやる――


私ならできる、と何故か思った。