オリビアが戸惑っている間に、次々と翼竜に跨った蛮族たちが舞い降りて来て王宮内を攻めてきた。
悲鳴が飛び交い、剣戟の音が響く様は悪夢そのもの。
二の足を踏んでいると、何かの獣の頭蓋骨を頭に被って武装している蛮族が剣を振り上げてオリビアに向かって突進してきた。
「きゃあ…っ!」
「がるるるるる!」
オリビアを守らんとするシルバーが突進して蛮族を突き飛ばすと、くるりと身を翻してオリビアに駆け寄り、首を下げた。
成長して大きくなったシルバーはどうやら狼ではなかったらしく魔獣だとへスターに聞いてはいたが、害はないのでそのままオリビアの元に居ることができたが――
山のように大きなシルバーの背に跨ったオリビアは、長い銀色の毛をしっかり指に巻き付けて低く身体を伏せた。
「ま、待って!シルバー、お父様やお母様やお兄様たちも一緒に…!」
…無理なことだとはわかっている。
わかっていても自分だけ逃げ出して残していった家族がどんな目に遭うか――想像するに容易い。
だがシルバーはオリビアの言葉を理解していても走り出した。
一筋の銀の矢のように森の奥目指して進んで行き、昔よく一緒に遊んでいた場所にたどり着くと、喧騒は遥か遠くに微かに聴こえる程度で、オリビアはへたり込んだ。
「なんで…どうしてこんなことに…?私だけ逃げるなんて無理だよ…。シルバーもそう思うよね?!」
「……わふっ」
それは違うと言うように首をふるふる振ったシルバーは、オリビアの回りをなんどかぐるぐる回った後お腹に抱き込むようにして丸くなる。
動揺して身体ががたがた震えていたオリビアは、シルバーのあたたかい体温に触れているうちに震えが止まり、剣もなくネグリジェ姿と裸足のままの姿に愕然とした。
「どうしよう…リヴィは人前に出しちゃ駄目だって言われてるし…。街に行って誰かに剣と私に着れるような鎧を借りて…」
「おい、こんなところにガキが居たぞ。可愛いお嬢ちゃんだな、売り飛ばすと高く売れそうだ」
下品な笑い声があちこちから聞こえて囲まれてしまったことに気が付いたオリビアは、凄まじい唸り声を上げるシルバーの首に抱き着いて声を震わせた。
「お父様は…!?お母様は…お兄様は!?」
「なんだこのガキ…。そういえば養女が見つかってなかったな。こいつか」
頭らしき眼帯をして無精ひげを生やした男がのそりと一歩近付いてきた。
そして、いやらしく笑う。
「細切れにして殺したよ。今頃は竜たちの腹の中だ」
――オリビアの金茶の瞳が、まばゆく光った。
悲鳴が飛び交い、剣戟の音が響く様は悪夢そのもの。
二の足を踏んでいると、何かの獣の頭蓋骨を頭に被って武装している蛮族が剣を振り上げてオリビアに向かって突進してきた。
「きゃあ…っ!」
「がるるるるる!」
オリビアを守らんとするシルバーが突進して蛮族を突き飛ばすと、くるりと身を翻してオリビアに駆け寄り、首を下げた。
成長して大きくなったシルバーはどうやら狼ではなかったらしく魔獣だとへスターに聞いてはいたが、害はないのでそのままオリビアの元に居ることができたが――
山のように大きなシルバーの背に跨ったオリビアは、長い銀色の毛をしっかり指に巻き付けて低く身体を伏せた。
「ま、待って!シルバー、お父様やお母様やお兄様たちも一緒に…!」
…無理なことだとはわかっている。
わかっていても自分だけ逃げ出して残していった家族がどんな目に遭うか――想像するに容易い。
だがシルバーはオリビアの言葉を理解していても走り出した。
一筋の銀の矢のように森の奥目指して進んで行き、昔よく一緒に遊んでいた場所にたどり着くと、喧騒は遥か遠くに微かに聴こえる程度で、オリビアはへたり込んだ。
「なんで…どうしてこんなことに…?私だけ逃げるなんて無理だよ…。シルバーもそう思うよね?!」
「……わふっ」
それは違うと言うように首をふるふる振ったシルバーは、オリビアの回りをなんどかぐるぐる回った後お腹に抱き込むようにして丸くなる。
動揺して身体ががたがた震えていたオリビアは、シルバーのあたたかい体温に触れているうちに震えが止まり、剣もなくネグリジェ姿と裸足のままの姿に愕然とした。
「どうしよう…リヴィは人前に出しちゃ駄目だって言われてるし…。街に行って誰かに剣と私に着れるような鎧を借りて…」
「おい、こんなところにガキが居たぞ。可愛いお嬢ちゃんだな、売り飛ばすと高く売れそうだ」
下品な笑い声があちこちから聞こえて囲まれてしまったことに気が付いたオリビアは、凄まじい唸り声を上げるシルバーの首に抱き着いて声を震わせた。
「お父様は…!?お母様は…お兄様は!?」
「なんだこのガキ…。そういえば養女が見つかってなかったな。こいつか」
頭らしき眼帯をして無精ひげを生やした男がのそりと一歩近付いてきた。
そして、いやらしく笑う。
「細切れにして殺したよ。今頃は竜たちの腹の中だ」
――オリビアの金茶の瞳が、まばゆく光った。

