冷たいアナタの愛し方

ジェラールの剣を投げたために丸腰になったオリビアは、胸に手をあてて深呼吸をした。


…胸の中にある剣…リヴィと名付けた剣は父たちやルーサーに人前で出してはいけないと言われていたが…今やるしかない。

リヴィ、と心の中で呼びかけると、すぐに声が返ってきた。


『私を使うのね』


「リヴィ…力を貸して。あの巨人を倒す力を」


『お安いご用よ。あなたが望むならいつでも私の力を貸すわ』


「わん!わんわんわんわんわん!」


その時シルバーが狂ったように吠えた。

巨人が襲ってきたのではと一瞬オリビアは身構えたが、シルバーは首を捩ってこちらを見て必死に何かを訴えかけている。

ついぽかんとして胸にあてていた手を離すと、青白い炎のようなものにシルバーが包まれていることに気が付いたオリビアは前のめりになって両耳を引っ張った。


「シルバー…?あなた何か変よ…?」


「がうるるるる…がうっ!」


僕に掴まって。


そう言われた気がして身を低くして長い毛にしっかり指を絡ませた直後、シルバーは力強く地面を蹴って立ち上がろうとしていた巨人の顔に近付くと、太い前脚を振り上げて――一閃した。


「ぐ………っ」


一瞬巨人が吠えようとしたが、それは音にならず――巨人の首が紙のようにすっぱり切れて吹き飛び、壁に激突して転がる。

コロシアムは再びしんと静まり返り、巨人の目は見開かれたまま空を見ていた。

だが手足だけはばたばたと動いて気味悪く、オリビアがぞっと身を震わせるとシルバーは同じように両手両足を一刀両断してばらばらにした。


「シルバー…あなた…」


ただの捨て犬ではない。

魔物だとは聞いていたが、まさかこれほどの力を持っているとは。


呆然とするオリビアをよそに、コロシアムがどっと沸く。


ドレス姿の小さくて可愛い女の子が巨人を屠ったのだ。


そして観客はひとつの言葉を叫びだす。


「ヴァルキリー!戦の女神だ!ヴァルキリー!ヴァルキリー!」


声が、ひとつになる。