冷たいアナタの愛し方

まさに間一髪。

シルバーが下敷きになってくれなければ…この砂地に叩き付けられて死んでしまっただろう。

なんとかすぐ起き上がってシルバーに乗ったものの、目の前には3mも4mもある緑色の巨人が立っている。


しかも…地面には血が飛び散って、何かの肉片のようなものも――


「まさか…食べられたの…!?」


「がががぁーっ!!」


人語を喋れないのかくぐもった叫び声を上げて棍棒を振り下ろした一撃は地面を抉り、シルバーが飛び退ってくれたおかげでその攻撃から免れることができた。

だがオリビアは丸腰。

頼れるのはシルバーだけで、自分は操作してもいないのにやみくもに棍棒を振る巨人の攻撃を華麗に避けてなるべく遠くに離れてくれる。


「どうしよう…どうしよう…!」


「リヴィ!」


空から降ってきた優しい声にはっとしたオリビアが闘技場に突き出た特別室を見上げる。

案の定そこには心配そうな表情のルーサーと、そして同じ表情をしたジェラールが居て、ジェラールが腰から剣を抜いてそれを放り投げて来た。


「なんとかしてそこから逃げろ!」


「そんなこと言ったって…!」


「リヴィ、君は強いはずだ!巨人はアキレス腱が弱いからそこを狙って!倒せればこっちのものだから、頑張れ!」


そこでようやく周囲の悲鳴や歓声が耳に入った。

全員が応援してくれているのがわかって鼓舞されたオリビアは、シルバーを操ってジェラールの剣を握るとまた振り下ろされてきた一撃をかろうじて避けてシルバーに囁きかける。


「巨人の足元に潜って。ルーサーのアドバイス通り脚を狙うわ」


「うわん!」


がってんだ。

そう返事をしたシルバーは、巨体にはそぐわない速さでからかうように巨人の回りをぐるぐる回って挑発する。

あまり知能の無い巨人はこまのようにぐるぐる回ってしまって身体がふらふらになり、その隙に足元に潜って剛毛が映えている足の甲に剣を突き立てた。


「ぐぉーー!」


耳をつんざくような絶叫。

これは消耗戦になる――


「巨人を倒して…ウェルシュを殺す…。お父様たちの仇…必ず討つわ!」


胸の奥がざわり、と熱くなった。