噛みちぎってやる――
本当は触りたくもないし、ましてや噛みつくなどもっての外だったが――それでもそうしなければやりきれない思いは打ち消せそうになかった。
そして噛みつかれたウェルシュは苦痛の絶叫を上げてオリビアの髪を掴むと思いきり引っ張って離そうと躍起になる。
「お前!ちょっと目をかけてやったと思ったら俺に噛みつくなんて何するんだ!」
髪を引っ張られようとも顔を叩かれようとも、離さない――
シルバーが身を低くして歯を剥き出しながら世にも恐ろしげな吠え声を上げてウェルシュに駆け寄ると、オリビアを離そうと躍起になっているウェルシュの背中に鋭い爪を立てた。
オリビアには腕に噛みつかれて、シルバーには背中を攻撃されて――
ジェラールとルーサーが動けずにいると、ウェルシュはよろよろ後退して手すりまで追い詰められ、眼下で巨人が戦っていた男を貪っている様子に発狂したような叫び声を上げると…
あろうことか、力任せにオリビアの腰に手をかけて持ち上げると、特別席の下に広がっている闘技場に――放り投げた。
「リヴィ!」
「ああ、なんてことを…!!」
オリビアが悲鳴を上げる間もなく落ちてゆく。
反応できたのはシルバーだけで、すぐさま躍り出てバルコニーを飛び越えて闘技場の下へ降りて行くと、ジェラールとルーサーは腰が抜けたウェルシュを押しのけて手すりの下を覗き込む。
…もう駄目だと思った。
だが2人の想像をよそに、彼らが見たものは…
オリビアを背に乗せたシルバーと、棍棒を手にした巨人が対峙している姿。
彼女にはウェルシュがつけた頬の傷以外の怪我はなく、ほっとしたのもつかの間…それまで歓声の止まなかったコロシアムは、一瞬にしてしんと静まり返った。
「お、おい、誰かが闘技場に落ちたぞ!」
「なんだあれは…ドレス姿!?女か!?」
歓声が悲鳴に変わる。
大きな狼のような犬にのったドレス姿の女と、今しがた対戦相手を食ったばかりの巨人。
結果を想像するにはあまりに残酷な光景だった。
本当は触りたくもないし、ましてや噛みつくなどもっての外だったが――それでもそうしなければやりきれない思いは打ち消せそうになかった。
そして噛みつかれたウェルシュは苦痛の絶叫を上げてオリビアの髪を掴むと思いきり引っ張って離そうと躍起になる。
「お前!ちょっと目をかけてやったと思ったら俺に噛みつくなんて何するんだ!」
髪を引っ張られようとも顔を叩かれようとも、離さない――
シルバーが身を低くして歯を剥き出しながら世にも恐ろしげな吠え声を上げてウェルシュに駆け寄ると、オリビアを離そうと躍起になっているウェルシュの背中に鋭い爪を立てた。
オリビアには腕に噛みつかれて、シルバーには背中を攻撃されて――
ジェラールとルーサーが動けずにいると、ウェルシュはよろよろ後退して手すりまで追い詰められ、眼下で巨人が戦っていた男を貪っている様子に発狂したような叫び声を上げると…
あろうことか、力任せにオリビアの腰に手をかけて持ち上げると、特別席の下に広がっている闘技場に――放り投げた。
「リヴィ!」
「ああ、なんてことを…!!」
オリビアが悲鳴を上げる間もなく落ちてゆく。
反応できたのはシルバーだけで、すぐさま躍り出てバルコニーを飛び越えて闘技場の下へ降りて行くと、ジェラールとルーサーは腰が抜けたウェルシュを押しのけて手すりの下を覗き込む。
…もう駄目だと思った。
だが2人の想像をよそに、彼らが見たものは…
オリビアを背に乗せたシルバーと、棍棒を手にした巨人が対峙している姿。
彼女にはウェルシュがつけた頬の傷以外の怪我はなく、ほっとしたのもつかの間…それまで歓声の止まなかったコロシアムは、一瞬にしてしんと静まり返った。
「お、おい、誰かが闘技場に落ちたぞ!」
「なんだあれは…ドレス姿!?女か!?」
歓声が悲鳴に変わる。
大きな狼のような犬にのったドレス姿の女と、今しがた対戦相手を食ったばかりの巨人。
結果を想像するにはあまりに残酷な光景だった。

